みなさん『クリップオンストロボ』はご存知でしょうか?
カメラの上に付ける、いわゆる外付けフラッシュのことですが、1台持っておけば人物撮影、商品撮影、店内撮影とジャンルを問わず大活躍する超おすすめのカメラ機材です。
そんなクリップオンストロボ、たくさんのメーカーから数え切れないほどの機種が出ていますが、選び方はわりとカンタン。
カメラ初心者、ストロボをはじめて買う人は最低限この5つをおさえておけば大丈夫です。
- 上下左右に首振りができるかどうか
- ガイドナンバー(明るさ・光量)が十分にあるか
- チャージ時間(発光間隔)の速さ
- E-TTL、i-TTLなどの自動調光があるか
- ハイスピードシンクロはできるか
5つの条件さえおさえておけば、純正の高額なストロボをわざわざ買う必要もなく予算をかなり抑えて安く買うことだって可能です。
では5つのポイントを順番に解説していきたいと思います。
- ストロボの首振り角度によってバウンスの自由度が変わる
- ガイドナンバー(明るさ・光量)が強ければ撮影の幅が広がり、余裕を持った撮影ができる
- チャージ時間が早いと連射でシャッターを切れる
- E-TTL、i-TTLの自動調光があればストロボの設定を自動で任せられる
- ハイスピードシンクロがあれば明るい場所でもストロボが使える
- クリップオンストロボをはじめて買う方におすすめの1台
ストロボの首振り角度によってバウンスの自由度が変わる
まず最初にストロボの発光部分が首振りできるかどうかというのは1番大事なポイントで、かならず上下左右に首振り可能なものを選びましょう。
実は首振りができるかどうかは、ガイドナンバー(明るさ・光量)よりも重要で、これがないとストロボの良さはほとんど発揮できません。
首振りができるメリットとしては
- 壁や天井に向けて光を当て、反射させたバウンス光を使える(自然光のような柔らかい質感を使える)
- タテ・ヨコ構図にかかわらず、同じ方向に光を飛ばせる
- カメラから離して使う場合に、角度の調整が便利
など、内蔵フラッシュだと真正面にしか飛ばせないところを、光を自由自在にコントロールして写真の質感を表現できるようになる大きなメリットがあります。
ちなみに、ストロボと100均の模造紙があればこんな写真が撮れるので商品撮影にはもってこいです(撮影ボックスとかは使ってません)。
もっとくわしく知りたい方はストロボの使い方、バウンスについて解説した記事をごらんください。
ガイドナンバー(明るさ・光量)が強ければ撮影の幅が広がり、余裕を持った撮影ができる
「大は小を兼ねる」がストロボの特徴で、ガイドナンバー(明るさ・光量)は大きければ大きいほど撮影の幅が広がります。
ただ気をつけてほしいのは、スペック表に記載されているガイドナンバーとは最大出力で発光したときの数値(フル発光)なので、実際は最大出力(表記のガイドナンバー)の半分程度のパワーで使うことが多いです。
フル発光(全力)に近い状態でずっと使っているとすぐ壊れるし、1度光ってから次に光らせるまでのチャージ時間が長くなってしまうので、撮影のテンポが悪くなり実用的ではありません。
ガイドナンバーはどれくらいのものを選べば良いのか?
一般的にガイドナンバーは40前後あれば実用的なスペック。
キャノン純正のストロボだと430EX Ⅲ-RT(ガイドナンバー43)あたりをえらぶといいでしょう。自分もよく使っています。
室内はもちろん屋外でも十分な光量があり、E-TTL(自動調光)やハイスピードシンクロにも対応する中堅のオールラウンダーといったところ。天井の高い室内だとちょっとだけ光量不足ですが。
ただし先ほども言いましたが、スペック表のガイドナンバーはフル発光×最大照射角(1/1発光、105mm)の数値なので、実際に撮影で使用するときはGN20くらいになると思って見ておくといいでしょう。
フル発光なんてほとんど使わないし、連続して使うと故障の原因にもなります。
※過去にフル発光を連発してストロボ燃やしたことがあります(笑)
くわしく知りたければ、ストロボのガイドナンバーについて解説した記事があるので、そちらを見てください。
チャージ時間が早いと連射でシャッターを切れる
ガイドナンバーの解説時にも軽くふれましたが、ストロボは1度光ってから次に光らせるまでに充電する時間(チャージ時間)が必要です。
これも機種によって性能差があり、あまり遅いと撮影のテンポが遅くなり時間のロスがかなり生まれる可能性も。
ポートレートなどで使う場合、スペックの低いストロボを使うとモデルさんのモチベーションにも悪影響がおよぶこともあるので気をつけたいところですね。
E-TTL、i-TTLの自動調光があればストロボの設定を自動で任せられる
E-TTL、i-TTLとはストロボの明るさを自動で調整してくれる機能で、メーカーによって呼びかたが異なりますが総称して『TTL(Through The Lens)』とおぼえておくといいでしょう。
TTL機能は「とりあえずストロボ使ってキレイな写真撮りたい!」と思う方や、マニュアルでストロボの設定をする自信がないかたにはおすすめ。ウェディングやイベント撮影など、いちいち設定を変える時間がないときはなかなか便利です。
ただし、写真が上達したいという目的でストロボを手に入れるならマニュアル設定で光をコントロールするテクニックを覚えておいたほうが将来的には大きくプラスに作用します。
ちなみに自分はTTL(自動調光)をほとんど使ったことありません。
ハイスピードシンクロがあれば明るい場所でもストロボが使える
通常「ハイスピードシンクロ」の機能が付いていないストロボはシャッタースピードを早くすると画面の半分がまっくらになる現象が起きます。(1/1000秒、1/4000秒など)
これは一眼レフやミラーレスに搭載されている『フォーカルプレーンシャッター』の構造上しかたないことではありますが…。
ただし、高速シャッターでもきちんと光を拾ってくれるハイスピードシンクロ(FP発光とも言う)に対応するストロボを使えば、屋外で逆光のモデルにストロボを当てて影を起こしたりなど、幅広い用途に使うことができるようになります。
純正ストロボやサードパーティー製でも中級機以上にしか付いていない機能ですが、初心者にはそこまで必要ありません。
ただ、ある程度慣れてくると使ってみたくなる機能なのはまちがいないので、はじめのうちにハイスピードシンクロに対応したストロボを買っておくと後々いい思いができるでしょう。
クリップオンストロボをはじめて買う方におすすめの1台
以上、ストロボをはじめて買う方に見ていただきたいポイントを紹介しました。
これだけおさえておけば大丈夫という5つのポイントはこちら。
- 上下左右に首振り可能な機種を選ぼう
- ガイドナンバーは40程度、もしくはそれ以上あればよし
- チャージ時間ができるだけ短いものを選ぶとテンポ良く撮影ができる
- TTL(自動調光)があれば、ストロボ側で明るさを自動調整してくれる
- ハイスピードシンクロ(FP発光)があればシャッタースピードを上げてもストロボが使える
これらを踏まえて最初に買う1台を考えてみましょう。
キャノンやニコンなどの純正ストロボをはじめ、国内メーカーのニッシン、中国メーカーのGodoxやYongnuoが出しているクリップオンストロボを紹介していきます。
純正ストロボは最強。カメラとの相性、連射性能、安定性、耐久性などすべてに優れている(ただし値段が高い)
予算に余裕があればやはり純正のストロボが最も優れてます。
カメラとの相性はもちろんのこと、クリップオンストロボに求められる連射性能、安定性、耐久性などすべてにおいて信頼がおけます。
それと、なにか不具合があったときにきちんと保証されるのもありがたいですよね。
キャノン、ニコンは純正のミドルスペック機がかなり優秀
キャノンの430EX Ⅲ-RTやニコンのSB-700などのミドルスペック機は、光量に問題がなければプロの現場でも十分使えるほど優秀。
TTL(自動調光)の精度もそうですが、長年プロユースの商品を作り続けてきただけあって、ミドルスペック機でも光量の安定性や連射への対応力が素晴らしい。
純正品に高いお金を払う理由ってほとんどが安定性や耐久性なんですよね。つまり現場でどれだけ機材を信頼できるかってことなんですが。
キャノンのミドル機 Canon クリップオンストロボ 430EX 3-RTの基本スペック
ガイドナンバー | 最大43(照射角105mm・ISO100 |
照射角 | 24〜105mm(ワイドパネル時14mm) ※自動設定可 |
首振り(バウンス) | 上:90°、左:150°、右:180° |
露出制御方式 | E-TTL II/E-TTL自動調光、マニュアル発光 |
調光補正 | 1/3段、1/2段ステップ±3段 |
ハイスピードシンクロ | 可能 |
マニュアル発光 | 1/1~1/128発光(1/3段ステップ) |
モデリング発光 | カメラの絞り込みボタン、ストロボのテスト発光ボタンによる |
発光間隔(充電時間) | 通常発光:約0.1~3.5秒、クイック発光:約0.1~2.5秒 ※ 単3形アル力リ乾電池使用時 |
重量 | 約295g(ストロボ本体のみ、電池別) |
引用元:アクセサリー|スピードライト430EX III-RT仕様
最大ガイドナンバー43、E-TTL/E-TTL Ⅱ、ハイスピードシンクロに対応と、必要なスペックはほぼ全て持っています。
小型で軽量なのと、発光量が細かく調整できるのがすごく良い。オレンジフィルターやバウンスアダプター(白いキャップ)もついてくるのでお買い得です。
あと、ストロボに『Canon』のロゴが入ってるとちゃんとしたカメラマン感があるので、1台持っておくのはありですね。
ニコンのミドル機 Nikon スピードライト SB-700の基本スペック
ガイドナンバー | 最大38(照射角120mm・ISO100 |
照射角 | 24〜120mm |
首振り(バウンス) | 上:90°、下:7°、左:180°、右:180° |
露出制御方式 | i-TTL自動調光、マニュアル発光、距離優先マニュアル発光モード |
調光補正 | +3.0~-3.0の範囲で1/3段ステップで調光可能。(i-TTL調光モード時) |
ハイスピードシンクロ | 可能 |
モデリング発光 | あり |
発光間隔(充電時間) | スピードライトSB-700 主な仕様を確認 |
重量 | 約360g(ストロボ本体のみ、電池別) |
ニコンはストロボのガイドナンバーを表記するときに最大数値を記載しないのでよく見てから購入してください(そこがニコンらしいと言えばニコンらしいのですが)。
- キャノンはガイドナンバーの最大数値を記載している(照射角105mm,200mm時の最大値を記載)
- ニコンは主に照射角35mm時のガイドナンバーを記載
同スペックのCanon純正ストロボ『430EX 3-RT』と比べると首振りが左右180°可能、照射角が120mmまで設定可能となかなかなスペック。とくに嬉しいのが下7°までストロボのヘッドを動かせる点ですかね。
重量が少し重いのは気になります。
予算に余裕があればフラッグシップを買うと、余計な買い物が減る
ガイドナンバーは最大40程度あれば、どんな場面でもほぼ問題なく使えますが、予算に余裕があれば各メーカーのフラッグシップモデル(キャノンの600EX Ⅱ-RTやニコンのSB-5000)を買ったほうがぜったい幸せになれます。
ストロボは「大は小を兼ねる」とも言われるのでより高スペックなモデルを買えば、それより下のものを使うことはそんなに多くありません。
所有欲はかなり満たされるし、絶対に揺るがないメインストロボとして使えるのでその点に関しては非常におすすめ。(高いけど)
キャノンのフラッグシップモデル Canon クリップオンストロボ 600EX Ⅱ-RTの基本スペック
ガイドナンバー | 最大60(照射角200mm・ISO100) |
照射角 | 20~200mm(ワイドパネル使用時14mm) |
首振り(バウンス) | 上:90°、下:7°、左/右:180° |
露出制御方式 | E-TTL II/E-TTL/TTL自動調光、外部調光オート/マニュアル、マニュアル発光、マルチ発光 |
調光補正 | 1/3、1/2段ステップ±3段 |
ハイスピードシンクロ | 可能 |
マニュアル発光 | 1/1~1/128発光(1/3段ステップ) |
モデリング発光 | カメラの絞り込みボタンによる |
発光間隔(充電時間) | 約0.1~5.5秒 |
重量 | 約435g(ストロボ本体のみ、電池別) |
引用元:アクセサリー|スピードライト600EX II-RT仕様
下位モデルの430EX Ⅲ-RTと比べて全体的にスペックが向上しているのはもちろん、発光間隔(チャージ時間)や首振りの自由度がかなり違います。
照射角を200mmまで設定できるのもプロ仕様を考えてのことでしょうね。1台持っておけばあらゆる現場で使えるクリップオンストロボなので、買って損はないでしょう。
ニコンのフラッグシップモデル Nikon SB-5000の基本スペック
ガイドナンバー | 最大55(照射角200mm・ISO100) |
照射角 | 20~200mm |
首振り(バウンス) | 垂直方向:上方向90°~正面~下方向7° (クリック:下7°/正面/45°/60°/75°/90°) 水平方向:左方向180°~右方向180° (クリック:正面/30°/60°/75°/90°/120°/150°/180°) |
露出制御方式 | ・i-TTL調光 ・絞り連動外部自動調光 ・外部自動調光 ・距離優先マニュアル発光 ・マニュアル発光 ・リピーティング発光 |
調光補正 | +3.0~-3.0の範囲で1/3段ステップで調光可能。 (i-TTL調光/絞り連動自動調光/外部自動調光/距離優先マニュアル発光時) |
ハイスピードシンクロ | 可能 |
発光間隔(充電時間) | くわしくはスピードライトSB-5000主な仕様を確認してください |
重量 | 約420g(本体のみ) |
ガイドナンバーのメーカー公称数値は34.5となっていますが、最大数値は55です(照射角200mm・ISO100時GN55)。
前に使用して驚いたのですが、とんでもない連射性能を持っていて、シャッターを連写してもちゃんとついてくるし光量も安定しています。
自分の中で「ニコンは質実剛健」というイメージが固まった瞬間でした。
純正は高すぎるので、もう少し安いストロボで高性能なものが欲しい
キャノン・ニコン・ソニーなど、メーカー純正のストロボはちょっと高すぎる…。というかたにはサードパーティー製のストロボをおすすめ。
国産メーカーだとニッシンのストロボ、国外だとGodoxやYongnuoなどの中国メーカーのストロボが十分実用的なスペックを持っています。
国内メーカーで、TTL対応のものが良ければニッシンを選ぶのはアリ
ニッシンデジタルはストロボ専業メーカーとして世界中のフォトグラファーから愛される製品を作っていて、国内のサードパーティー製ストロボを選ぶならニッシン一択。i40あたりが人気で、他の上位機種も使ってる人たまに見かけます。
価格も手頃で高性能なものが多いのですが、自分は操作パネルがしっくり来なくていまだに使ってません。
”マシンガンストロボ”で有名なMG8000だったらちょっと欲しいかな。
国内メーカーにこだわりがなく、マニュアルでも良いという方はGodoxなどの中国メーカーもあり
Godoxは中国メーカーとはいえ、最近の活躍はめざましくAD200やAD360などの注目製品をバンバン出していて、日本ではケンコーが国内代理店として販売しているので比較的安心して購入できるかと思います。
基本マニュアルでの操作となりますが、別売りでX1Tという無線発信機を使えばTTL+ハイスピードシンクロができるようになり、さらにカメラから離れた位置でストロボを発光させることができます。
憧れのオフカメラストロボライティングができるようになるので、慣れてきたら複数のストロボを使って多灯ライティングに挑戦するのも楽しいですよ。
というわけで、ストロボの選び方とおすすめ商品の紹介でした。他にもまだまだサードパーティー製の格安高性能ストロボはありますので、以前に書いた記事を2つ紹介しておきます。
ストロボの使い方についてくわしく知りたい方はこちらの記事もごらんください。
ストロボライティングの世界は奥深く、非常に面白いです。これだけ安く機材を揃えられる今の時代は大チャンスだと思うので、ぜひみなさんも挑戦してみてください。
それでは良きカメラライフを。
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