ストロボのガイドナンバーとは? たまーに聞かれるので説明すると、
「ISO100の時に1mの撮影距離で適正露出となる絞り値」 のことなんですが、初心者さんには「????」ですよね。
僕もこんな説明されたらさっぱりわかりません。
『ガイドナンバー』とは、ものすごく簡単に言うと、ストロボのパワー(発光量)を表す数値。
『GN』と表記されることが多く、以下のように計算します。
うん、これでもやっぱり難しい。笑
ガイドナンバーを基準に考えると少しわかりにくいので、
として考えましょう。
なので、計算の基準値をガイドナンバーから撮影可能距離に置きかえて…。
すこしわかりやすくなったでしょうか? 肝心のガイドナンバーについての説明はこれからですが、「 ストロボのパワー = 撮影可能距離 」のイメージがあると、この先の説明が理解しやすいです。
※ちなみに「撮影可能距離」とは、カメラから被写体までの距離のことで、光が往復する分の計算は不要です。
実効GNを求めて撮影可能距離を計算する
「撮影可能距離 = ガイドナンバー ÷ レンズのF値」としましたが、ここでの「ガイドナンバー」はカタログに書かれた数値ではなく、「実効GN(実際に有効なガイドナンバー)」を使用します。
実効GNは、以下3つを掛け合わせて求めることができます。
- ガイドナンバー(照射角に応じたGN)
- パワーレシオ係数(ストロボの発光量により増減)
- ISO感度係数(ISO感度により増減)
具体的な計算式は以下の通り。ただの掛け算です。
「うわぁ…。」となった方はご安心ください。
実はこれ、覚えてなくても撮影にそこまで影響ないです。笑
(そして意外とカンタン)
ただし、仕組みを覚えておくとストロボの設定で迷ったときにけっこう役立つし、「よくわかんないけどストロボ使えてる!」みたいなモヤッとしたことにはなりにくいです。
では、さっそく計算に入ります。
照射角、パワーレシオ係数、ISO感度係数の各数値については、早見表を作ったのでそちらを参考にしてください。
今回はCanonの430EXⅢ-RTを基に表を作成していますが、基本的にどのストロボもほぼ一緒で、以前に紹介した激安中華ストロボのYONGNUOなどでも同じです。
ストロボガイドナンバーの早見表(照射角によって変動)
まずは計算の基準となるガイドナンバーを見てください。全て1/1発光(フル発光)時の数値です。
照射角 | ガイドナンバー |
24mm | 22.0 |
28mm | 24.0 |
35mm | 28.0 |
50mm | 33.0 |
70mm | 40.0 |
80mm | 41.0 |
105mm | 43.0 |
照射角を広角側(24mm)にすると光が弱くなりますが広い範囲を照らします。
望遠側(105mm)にすると光は強いですが、照らす範囲が狭くなります。
※照射角24mm~105mmの変化を表す画像
僕は照射角の仕組みを「水道ホース」に例えることが多いのですが、出口を絞ると遠くまで水が飛ぶ原理と一緒。
照らす範囲が狭いほど、出力・ガイドナンバーが上がり、撮影可能距離が伸びます。
パワーレシオ係数の早見表
ストロボの発光量に応じて増減するのがパワーレシオ係数。
説明書の裏側にパワーレシオ係数を加味したガイドナンバーが掲載されているので、実はパワーレシオ係数については説明しなくてもいいんですよね…。
今回は計算の仕組みを理解してもらう目的もあるので、解説しておきます。
ストロボ発光量 | パワーレシオ係数 |
1/1 | 1 |
1/2 | 0.7 |
1/4 | 0.5 |
1/8 | 0.35 |
1/16 | 0.25 |
1/32 | 0.17 |
1/64 | 0.12 |
1/128 | 0.09 |
1/1(フル発光)でガイドナンバーの増減なし、1/128発光で0.09倍(9%)までガイドナンバーが減少します。
発光量はストロボの出力を決める大事な要素。
だからといってフル発光ばかりしていると、電池が持たない&連射が効かないので、どれだけ発光量を抑えて撮影できるかは結構大事なポイントです。
※激安の中華ストロボなんかはフル発光連発してるとすぐ壊れたりしますので注意が必要
そのためにもガイドナンバーの仕組みは理解しておくといいでしょう。
ISO感度係数の早見表
ISO感度係数は、カメラ側のISO感度を上げることでガイドナンバーが増加していく仕組みです。
なので、ISO感度を上げればガイドナンバー(実効GN)の底上げが可能。
ISOの数値 | ISO感度係数 |
100 | 1 |
200 | 1.4 |
400 | 2 |
800 | 2.8 |
1600 | 4 |
3200 | 5.7 |
6400 | 8 |
ISO400で2倍のガイドナンバー、ISO6400で8倍になるので、Canon430EXⅢ-RTをISO6400で使った場合は、GN344(43×8)まで出ます。
各表を参考にした実効GNの計算例
表を参考に照射角24mm(最小)、1/8発光、ISO400時の実効GNを計算すると…、
- ガイドナンバーの基準値=22(照射角24mm)
- パワーレシオ係数=0.35(1/8発光)
- ISO感度係数=2(ISO400)
と、なります。(わかるかな…?)
わからなければ上の表をもう一度見直してみてください。
実効GNを使って「撮影可能距離」を計算した例
ようやく実効GNが30.1と出たところで、先ほど紹介した計算式に当てはめてみましょう
撮影時のF値をF4.0に設定したと仮定すると
「 30.1 ÷ 4.0 = 7.525(m)」となります!
※ちなみにF8.0で撮影すると半分の3.7625m。
もし仮に、照射角105mm、1/1発光、ISO6400、F1.4で撮影すれば、理論上は245.7m先まで光が届く計算です。
まあそんな使い方する場面はなさそうですが…。
これを撮影のたびに計算する必要はありませんが、高い天井でバウンスをするときに覚えておいたほうがいい知識ではあります。
もしバウンスがわからないかたは、ストロボの使い方について解説した記事があるのでこちらもあわせてどうぞ。
要点まとめ。ストロボのパワーは「照射角×発光量」で決まる
長々と書きましたが結局のところストロボの出力は「照射角×発光量」で決まります。
※最終手段として、ISOで受け取る光の量を調整するイメージ。
なので、まずはこの3つだけ覚えておけばOK。
- 照射角は広角側(24mm)範囲が広く弱い光、望遠側(105mm)だと範囲が狭く強い光になる。
- 発光量は1/1がフル発光の最大出力、1/16,1/32,1/64,1/128と順に出力が下がっていく。
- ISOを上げれば到達距離が伸び明るくなるが、画質が落ちるので最終手段とする。
ストロボは「習うより慣れろ」の方が早い
なんだか身もふたもない感じですが、解説した計算を現場でチマチマやってる人は見たことありません…。
まずは体に慣らすといった意味でも、ストロボを使って色んな写真を撮ってみましょう。
練習が必要な方は、カメラの設定を下記のように固定して、発光量・照射角を調整しながら光の届く距離を確認するのがおすすめ。
- シャッタースピード1/60秒
- F4.0
- ISO100
まずは光量の感覚をつかめるようになるまで撮ってみてください。
撮影の回数分は間違いなく上達します。